ごくかんたんなモデル
写真事務所で働いている友人から「モデルのバイトしない?」と言われ、冗談で「ついに来たか」と言って引き受けましたが、正直「なんで?」と不思議でしょうがありませんでした。その事務所には売れっ子の写真家の人たちがいて、スタジオにはいつもプロの美しいことこのうえないモデルがいくらでも出入りしていたからです。
指定された黒っぽい服装で出向くと、車に乗せられてほうぼうに連れて行かれました。そのときの写真撮影の対象は、新築の大きなビルでした。写真の構図が決まると、写真家のアシスタントの方に指定されたところに立って、掛け声と同時にゆっくり歩きます。なんどか歩かなければならないこともありましたが、それぞれせいぜい数メートルの距離だったので、全く労力は要りませんでした。
撮影された画像を見せてもらうと、私の顔は一切わからないくらい、かなり遠くに写っていました。主役はあくまでもビルで、ビルに来た一般人がビルのエントランスや通路を歩いている「影」が、ビルのスケールを際立たせるためのモデルでした。しっかりメイクしたのは、全く意味がありませんでした。
ジョブリンクワーク